ゲームデザインパターンについて考えてみる その2:弱点属性パターン
y_miyakeさんがゲームデザインパターンについて精力的に書かれているので僕も考えてみる。以下は、y_miyakeさんのブログで書かれていたゲームデザインパターンの一覧。
個々のパターンを集めるだけでなく、目指せ! ゲームデザインのパターンランゲージ!
さて、このエントリでは、ゲームデザインパターンの厳密な定義はまだしないでおこうと思う。つまり、従来の、「ある文脈において繰り返し発生する問題に対する有効性が実証された解法」という定義は横においておく。
このエントリでは、単にゲームデザインパターンを「ゲームデザインにおいて、繰り返し発生する要素、あるいは要素とそれら間の関係からなる部分的な構造を抽象化して名前を付けたモノ」としておく。もっとゆるくいえば「このシステムってあのゲームのパクリっぽいな。」と思ったら、そのシステム的な要素がパターンであるとしたい。
とりあえずは、このようにゆる〜い定義でパターンを集めていきたいと思う。
今回は「弱点属性パターン」というものを考えたいと思う。すごく基本的なものだけど。RPGなんかでは良く使われるもので、たとえば、あるモンスターは炎属性に弱い設定されているとすると、その属性で攻撃すると通常より大きなダメージを与えられるというもの。
まずは、NDSのRPGである『世界樹の迷宮II』を例に考えてみる。なお、パターンとなるようなゲーム(のデザイン)の部分構造は、僕が提案しているモデリング方法で表現することにする。この方法についてはこちらから「ゲームデザインのモデリング」の連載エントリを参照。
下記の図は、『世界樹の迷宮II』で弱点属性パターンとなるような部分的な構造を表している*1。なお、図の乱雑さを避けるため、一部は省略している*2。
この図で示しているように、『世界樹の迷宮II』では、次のような弱点システムを持つ。
- 属性と言うモノが存在する。たとえば「氷属性」や「雷属性」など。
- 攻撃系のスキルは、ある属性を持つとされている。たとえば雷の術式は、雷属性を持つ。
- モンスターは、弱点となるような属性を持つことがある。たとえば、森マイマイは、雷属性が弱点と設定されており、この属性で攻撃すると、1.5倍のダメージを与えることができる。
続いての例は『ペルソナ3』。こちらもRPG。多少大雑把ではあるけれど、同じく、弱点属性パターンとなるような部分的な構造を表しているのが下記の図になる*3。
この図で示しているように、『ペルソナ3』では、次のような弱点システムを持つと言える。
- 属性と言うモノが存在する。たとえば「斬撃」や「火炎属性」や「回復」など。
- 一部の属性は、防御耐性となるような属性である。たとえば、「斬撃」や「火炎属性」など。
- スキルは、属性を持つ。たとえば、アギは火炎属性を持つ。
- シャドウは、防御耐性となるような属性を持つ。
- 防御耐性となる属性の攻撃を受けた場合、特定の効果が発生する。たとえば、弱点効果、耐性効果などがある。
- 弱点効果の場合「ダメージ量が増える」「ダウン状態になる」という効果を持つ。
- マジックハンドは、火炎属性を弱点として持つ。
次に3つ目の例としたいところだけど、ここまでで僕の気力が尽きたので、とりあえずこの二つで考えたい。
なお、『世界樹の迷宮II』では弱点属性(ダメージ量が増える)だけでなく耐性属性(ダメージ量が減る)があるが、耐性属性は別パターンとして考える。また、『ペルソナ3』でも、弱点だけでなく、耐性、無効、反射、吸収などがあるが、別パターンとする。というのも、これらは一つ一つ独立に組み合わせて適用が可能だと思われるためである。
これら2つの例を最初に示したゲームデザインパターンの一般的な図を使って表せば、こうなる。
また、これら二つの弱点システムを抽象化して、「弱点属性パターン」として表したのが次の図になる。なお、抽象化した構造と、具体的な構造を区別するために、要素の色を変えている。下記の図は、パターンとして抽象化した構造である。
基本的な構成要素は次の5つであると考えた。
- 攻撃手段:スキルなど。
- 攻撃対象:モンスターなど。
- 属性:雷や火炎など。
- 攻撃属性:ある攻撃手段が持つ属性。雷や火炎など。
- 弱点属性:攻撃対象が持つ属性。雷や火炎など。
- 弱点属性への攻撃効果:弱点属性に一致するような属性を持つ手段で攻撃したときの効果。たとえば、ダメージ増加など。
色々と気になる点はあるけれど、僕の集中力がなくなってきたので今回はここで終わりたい。
ゲームデザインパターンを具体的に考えたのは今回が初めてなので、色々曖昧な点があるとは思う。今後のエントリでゲームデザインパターンの概念を洗練していきたい。
追記
下記エントリにて、属性というコンセプトの歴史的な背景が紹介されています。「属性っていつぐらいのゲームから導入されてたんだろ?」と気になる方は参考に。