ゲームデザインとゲーミフィケーション

ゲームデザインゲーミフィケーション(ゲーム化)はどんな関係でしょうか?

ゲームと非ゲーム

まず、ゲームデザインについて考えてみます。ゲームデザインについての定義は様々ですが、何をデザインするのか、つまり「ゲーム」をデザインするという点については、共有されているとしたいと思います。もちろん、具体的には、ゲームとは何か、という点に依存しますが、ここでは深く考えないことにします。

また、ゲームデザインが行われたことで、モノ(人工物)としてのゲームが作られたことになるのかについても、微妙な点ですが、ここでは、ゲームデザインが行われた結果は、ゲームであると考えます。

次に、ゲーミフィケーションの定義です。今回は、こちらの定義を参考にしてみます。

ゲーム以外のサービス(特にウェブサイトやコミュニティ)にゲーム(を面白く、楽しくするため)に用いられるテクニック、考え方を導入することで、ユーザーがもっと活性化するようにすること

http://impresario.me/gamification/

この定義でまず注目したいのは「ゲーム以外の」という点です。他の定義でも、この点については多くが共有しているようです。たとえば、wikiでは、non-game という言い方がされています。この点は、ゲームをゲーム化する(gamify)とは言わないという意味で自然に思えます。

ここまでで、ゲームデザインゲーミフィケーションとの間の基本的な関係が示せそうです。下記の図は、モノは、ゲームとゲームでないもの(非ゲーム)に分類できることを示しています。

先ほど、ゲームデザインとは、ゲームを出力するものであるとしました。上記の図にこのことを追加します。

では、非ゲームを出力するのは何でしょうか? ここでは、非ゲームデザインであるとします。

ゲーム構成要素と非ゲーム構成要素

再び、ゲーミフィケーションの定義に戻ります。

ゲーム以外のサービス(特にウェブサイトやコミュニティ)にゲーム(を面白く、楽しくするため)に用いられるテクニック、考え方を導入することで、ユーザーがもっと活性化するようにすること

http://impresario.me/gamification/

次に着目するのは「ゲーム(を面白く、楽しくするため)に用いられるテクニック、考え方」という点です。gamification.orgのwikiでは、game mechanics と game-thinking という言い方がされています。

では、ゲーミフィケーションで導入されるのは、具体的にどのようなテクニックや考え方でしょうか? 引用してみます。

スコア蓄積:ゲームをクリアしていくごとに加算されるスコアの導入する
レベルアップ:現在のステータスを可視化しつつ、ユーザーを特定行動(=レベルアップ)に方向付ける。
競争:ユーザー同士を競い合わせるルールの設計を行う。
難題の提示:ユーザーが「躍起になって」取り組める難題の提示。
モチベーション:報酬(バッヂやポイント、仮想通貨など)の付与によるモチベーション維持の仕組みを導入する。
ステージの設計:いわゆる「面」の設定。スモールゴール形式で第一ステージ、第二ステージとクリアしていく行為の設計を行う。

http://impresario.me/gamification/

上記では、「〜する」という言い方がされています。以下では、何がゲームを構成するのか、という点で、該当すると思われるものを太字にしました。

  • スコアの導入する」
  • 「現在のステータスを可視化」
  • 競い合わせるルールの設計を行う」
  • 難題の提示」
  • 報酬(バッヂやポイント、仮想通貨など)の付与」
  • 「面」の設定」です。

「スコア」や「ステータス」、「報酬」、「面」などは普段ゲームをする人が使う言葉として分かりやすいように思えます。「競い合わせるルール」や「難題」については、このレベルの抽象度で会話がされることは少ないかもしれません。
gamification.orgのwikiでも、game mechanicsとしていくつか紹介されています。以下、分かりやすいものです。

  • 実績
  • ポイント
  • レベル
  • エス

この節で着目しているのは「ゲーム(を面白く、楽しくするため)に用いられるテクニック、考え方」という点でした。ここでは、上記のテクニックやgame mechanicsを「ゲーム構成要素」と呼ぶことにします。ただし、ゲーム化のために、導入できない、あるいは、まだ導入されていないようなものも「ゲーム構成要素」と呼びます。ここで確認しておきたいのは、あるゲームはより細かな要素で構成される、という点です。あるいは、要素で構成されるとして考えられるという点です。下記の図はこの点を示しています。

ここではゲーム構成要素というのを幅広くとらえておきます。BGMや効果音、ストーリー、グラフィックなども含まれるとしておきます。

次に、非ゲームの構成要素を考えます。ここでは簡単に、「ゲーム構成要素」と「非ゲーム構成要素」があると考えました。

ゲーム構成要素を持つ非ゲームは、ゲーム化されたモノです。例を図に示します。

なお、ゲームには「非ゲーム構成要素」は存在しないのかという疑問はありますが、保留としておきます。

次に、ゲームデザインとゲーム構成要素の関係です。単に、ゲームデザインは、ゲーム構成要素を出力すると考えます。

最後に、同様に、非ゲームデザインについて考えます。非ゲームデザインは、非ゲーム構成要素を出力します。ただし、ゲーム構成要素を出力するような行為、つまり、ゲーム化を行ってもかまわないとします。ゲーム化は任意の行為であるとします。

ゲームデザインゲーミフィケーション

さて、再びゲーミフィケーションの定義に戻ります。この節ではゲームデザインゲーミフィケーションの互いの発展過程の関係の視点で考えます。

ゲーム以外のサービス(特にウェブサイトやコミュニティ)にゲーム(を面白く、楽しくするため)に用いられるテクニック、考え方を導入することで、ユーザーがもっと活性化するようにすること

http://impresario.me/gamification/

定義で着目するのは「ゲーム(を面白く、楽しくするため)に用いられるテクニック、考え方を導入する」という点です。前節とほとんど同じですが「導入する」あるいは「適用する」ということを考えます。

この点からは「ゲーム(を面白く、楽しくするため)に用いられる」という言葉が出てきますが、「非ゲームに用いられる」という言い方はされていません。つまり「非ゲーム(を面白く、楽しくするため)に用いられるテクニック、考え方を導入する」ということではありません。つまり、ゲームから非ゲームへの一方的な関係性が読みとれます。別の言い方をすれば、ゲーム化は、既に行われたゲームデザインに依存するとの前提が読みとれます。下記の図は、ゲーム化に使える構成要素は、ゲームデザインが先に行われていないと、導入できないことを示しています。

まとめ

この記事では、ゲームデザインゲーミフィケーションの間の基本的な関係を考えました。いくつかの疑問があります。

  • ゲーム化することはゲームデザインすることの一種なのか?
    • ゲームに用いられるテクニックを非ゲームに導入することは、ゲームデザインをしていることになるのか?
  • 非ゲームでの独自のゲーム化のテクニックは生まれないのか?
    • そのテクニックはゲームデザインにも適用できるのか? 適用できないなら何故なのか?