ゲームデザイン研究会(第二回)の発表補足
日本デジタルゲーム学会第三回研究会のゲームデザイン研究会(第二回)で発表しました。大阪からskypeを使っての発表でした。
発表資料はこちら。
補足的なことをいくつか。
ゲームデザインの創造性
まず、ゲームデザインの創造性について。今回の僕のアプローチのように、プレイヤー(ユーザー)から出発することの疑問は、ゲームデザインの創造的な部分に関して有益なことを直接的にはいえない点です。むしろ、今までにない面白いゲームが出現することを阻害するようなことになってしまうかもしれません。しかし、ゲームデザインは、創造的な部分だけで構成されているわけではない、とも言えます。創造的でない部分に関しては、原理・原則を使って対処していこう、というのが僕の立場です。そうすることで、創造的な部分を考える余裕が生まれれば良いと考えています。
ゲームの理解の役割
今回の発表で個人的に思ったのは、ゲームとは何か、ゲームとはプレイヤー(ユーザー)に対してどんなことを提供できるものでなければならないのか、を議論しなくてもよいのではないかと言う点です。自由でいいのではないかということです。とはいえ、間違っているかもしれません。
アプローチの限界について
今後考えていかなければいけない点としては、今回の発表のようなアプローチでゲームデザインやそのプロセスのモデルを修正しながら構築していくことの限界はどこか、ということです。以下では、いくつかの方向性を紹介します。
意思決定の分類
一つは、創造性からみた、意思決定の分類です。これはjohn geroさんの研究を参考にしています。なんとなくですが、個々の意思決定が創造的なのかどうかと、意思決定の組み合わせが創造的なのかどうかの二つがありそうです。
意思決定間の関係の数
二つ目の方向は、意思決定間の関係性について明らかにする点があります。発表では、二つの意思決定がある時、満足/不満を生み出す関係が生じる、としました。ある意思決定がどれだけの数の他の意思決定と関係を持つのかを明らかにするのは重要な点に感じました。5なのか100なのかで話は変わってきます。
なんとなくですが、この点が重要なのは、ゲームデザインをどれだけ部分的に独立して議論できるかに関わってくるからかもしれません。密な関係・疎な関係の度合いが一つのまとまりの単位になるかもしれません。もしかすると、ゲームデザインのモジュール化みたいな話につながるのかもしれません。
複数のプレイヤー
プレイヤーが複数いる場合についてです。これについては、さらに考えていく必要があります。
実は既に一つ事例はあります。「ゲームプレイヤー間のインタラクションとゲームデザインの適合性」を参照してください。結論としては次のようなことです。
(1) ゲームプレイヤーは、ゲームプレイ時において他のゲームプレイヤーに対する不満を持つ
(2) ゲームプレイヤーは、そのような不満の解消をゲームデザインに対して期待する
したがって
ゲームデザインのプロセスは、ゲームプレイヤー間のインタラクションにゲームデザインを適合させるプロセスである
また、会場からの感想でありましたが、直接プレイする人でないような、たとえばギャラリー的の役割についても考察が必要かもしれません。
複数のゲーム
ゲームが複数ある場合についてです。複数と言っても同時に複数のゲームをプレイするというわけではなく、過去のゲーム体験が、プレイヤーが今やっているゲームのデザインの期待にどんなに影響するのかです。FFをやっているのにこんなのDQじゃない、として不満が出るのでしょうか? あるいは、このメーカーのゲームは難しいけれど、それがこのメーカーの特色なので不満はない、などです。
過去ゲーム体験は、今のゲーム体験に影響を与えると考えられます。しかし、このゲームをやっている場合に、過去の全ての体験が影響するのでしょうか? それとも、このゲームの場合これとあれのゲーム体験が影響するのでしょうか? 他には、過去のあるゲーム体験の全体が影響を与えるのでしょうか? それとも部分的なものが影響を与えるのでしょうか?
ゲームデザイナーの位置づけ
ゲームデザイナーの位置づけについてです。何となくですが、プレイヤーとゲームデザイナーとの間のインタラクションは、プレイヤーが期待するゲームデザインにどのように影響するのでしょうか? 何となくの問いです。
まとめ
今のところ、今回発表したようなモデルを使ってテーマにできそうなことは以上のようなことかと考えています。