ゲームデザインパターンについて考えてみる その3:耐性属性パターン
ゲームデザインパターンについて考えてみるの続き。
このシリーズでは、面白い/役立つゲームデザインパターンを紹介するというより、現時点では以下の点に焦点を当てている。
前回は、「弱点属性パターン」というのを考えてみた。今回は似ているパターンとして、「耐性属性パターン」を考えてみたい。
ゲームデザインパターンとは
このエントリでは、単にゲームデザインパターンを「ゲームデザインにおいて、繰り返し発生する要素、あるいは要素とそれら間の関係からなる部分的な構造を抽象化して名前を付けたモノ」としておく。もっとゆるくいえば「このシステムってあのゲームのパクリっぽいな。」と思ったら、そのシステム的な要素がパターンであるとしたい。
前回の要約:弱点属性パターン
「弱点属性パターン」はRPGでは昔から良く使われているパターンであり、大雑把にいえば、キャラクターには弱点となるような属性が設定されていて、その属性で攻撃すれば、効果的な攻撃になるというもの。下記の図は、前回作ったもので、この「弱点属性パターン」の構造を示している。
- 攻撃手段:スキルなど。
- 攻撃対象:モンスターなど。
- 属性:雷や火炎など。
- 攻撃属性:ある攻撃手段が持つ属性。雷や火炎など。
- 弱点属性:攻撃対象が持つ属性。雷や火炎など。
- 弱点属性への攻撃効果:弱点属性に一致するような属性を持つ手段で攻撃したときの効果。たとえば、ダメージ増加など。
耐性属性パターン
「耐性属性パターン」は、「弱点属性パターン」の逆ともいえるようなパターン。キャラクターには耐性となるような属性が設定されていて、その属性で攻撃すれば、効果的でない攻撃になるというもの。
前回の「弱点属性パターン」では、『世界樹の迷宮II』と『ペルソナ3』を具体例として紹介した。今回もこれら二つを例にしたい。
まずは、『世界樹の迷宮II』の場合から。以下の図は、耐性属性パターンとなるようなゲームデザインを部分的に示している。
この図で示しているように、『世界樹の迷宮II』では、次のような耐性属性システム(デザイン)を持つ。
- 属性と言うモノが存在する。たとえば「氷属性」や「雷属性」など。
- 攻撃系のスキルは、ある属性を持つとされている。たとえば「氷の術式」は、「氷属性」を持つ。
- モンスターは、「耐性となるような属性」を持つことがある。たとえば、「フィッシュマン」は、「氷属性が弱点」と設定されており、この属性で攻撃すると、「0.5倍のダメージ」になる。
同様に、以下の図では、『ペルソナ3』の場合を示している。
この図で示しているように、『ペルソナ3』は、次のような耐性システムを持つと言える。
- 属性と言うモノが存在する。たとえば「斬撃」や「氷結属性」や「回復」など。
- 一部の属性は、防御耐性となるような属性である。たとえば、「斬撃」や「氷結属性」など。
- スキルは、属性を持つ。たとえば、ブフは氷結属性を持つ。
- シャドウは、防御耐性となるような属性を持つ。
- 防御耐性となる属性の攻撃を受けた場合、特定の効果が発生する。たとえば、弱点効果、耐性効果などがある。
- 耐性効果は、ダメージを減少する効果を意味する。
- 赤のシジルは、氷結属性に耐性がある。
続いて、下記の図は、これら二つの例をもとに、「耐性属性パターン」としてその構造を示している。
基本的な構成要素は次の5つであると考えた。
- 攻撃手段:スキルなど。
- 攻撃対象:モンスターなど。
- 属性:雷や火炎など。
- 攻撃属性:ある攻撃手段が持つ属性。雷や火炎など。
- 耐性属性:攻撃対象が持つ属性。雷や火炎など。
- 耐性属性への攻撃効果:耐性属性に一致するような属性を持つ手段で攻撃したときの効果。たとえば、ダメージ減少など。
考察
前回の「弱点属性パターン」と今回の「耐性属性パターン」をもとに、パターン間の関係について考察したい。
まずは、それぞれのパターンの構造をもう一度以下に示す。
一つ分かるのは、互いに共通する要素があるということ。下記の図は、これら二つの構造を合成した構造を示している。
この図からは以下が分かる。
- 合成可能性: これらのパターンは、同時に適用可能or存在していても良い。実際、『世界樹の迷宮II』と『ペルソナ3』では、同時に存在していた。
- 順序独立性: これらのパターン間には、適用の順序の関係がない。「弱点属性パターン」が先に存在してもいいし、「耐性属性パターン」が先に存在してもよい。
- ただし、「耐性属性パターン」より「弱点属性パターン」もを優先するといった優先順位には差があるかもしれない。
最後の考察。
- 階層レベル: 「耐性属性パターン」と「弱点属性パターン」は同じ階層レベルに属すると考えられる。これらパターンの上位と下位にどのようなパターンが存在するのはまだ不明だけど。
次回に続く。
続き
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参考
Nikos A. Salingaros, The Structure of Pattern Languages