ゲームデザインのモデリング:「ペルソナ3ポータブル」の新要素 その2

ゲームデザインモデリングしてみよう」シリーズの8回目。

なお、これまでのモデリング結果は「ゲームデザインのモデリング」というドキュメントにまとめ中。

前回の続きとして、今回もモデリング対象してはPSPで発売予定のRPGである『ペルソナ3ポータブル』の新要素をやってみる。

ペルソナ3ポータブル - PSP

ペルソナ3ポータブル - PSP

モデリングの概要

以下の説明は、既に知っている方は読み飛ばしてもらって大丈夫。


具体的なモデリングに入る前に、どういうモデリングなのかが少し分かってきたのでまとめてみる。

  • 何を表現するためのモデルか?:このモデルは、ゲームシステム上の仕様を細かな決定要素からなる構造に分解して表現する。
    • 決定要素とは、たとえば「アビリティがある」「カウンター(というアビリティ)がある」「カウンターは5%の確率で発生する」といったもの。


  • 何のためのモデルか?:このモデルは、個々の決定要素をプレイヤーの不満の観点から検討・評価・再決定するために利用できる。
    • たとえばプレイヤーは「カウンターの発生率が低すぎて役に立たない」というような不満を持つかもしれない。これは「カウンターは5%の確率で発生する」という決定に対する不満である。したがって、この決定を変更する必要があるかもしれない。

モデリング

ペルソナ3ポータブル』は、アトラスからPSPで発売予定のRPGであり、PS2で発売された『ペルソナ3』のリメイク作品。リメイク&携帯機ということで、いくつかの新たな要素の追加や改良がおこなわれている。このエントリではその新要素を中心にモデリングしてみたい。

なお、詳細は、ファミ通の記事が参考になる。

さて、前回エントリでは、新要素の一つである「ゲーム開始時に主人公の性別を選択できる」ということについてモデリングした。下記の図は、前回までで作成したモデルである。

このモデルを拡張・修正するような形でモデリングを行っていく。前回までと同じく、はじめから適切だと思うモデルを紹介するのではなく、悩みや間違い、失敗の過程を伝えていきたい。


さて、主人公の性別の違いにより何が変わるのか、というところからモデリングの続きを行いたい。ファミ通などの情報によると以下が変わることが判明している。

  • 主人公の性別によりBGMが変わる。
  • ステータス画面の背景や画面右上の日付表示部分。男性の場合は、青に、女性の場合はピンクに。
  • 女性主人公の場合には、ベルベットルームの案内人の性別を選択できる
  • 女性主人公の場合にだけ現れるコミュキャラクターが存在する。

最後の二つは、ペルソナ3や4をやっていない人には、具体的な想像が難しいかもしれない。このエントリでは、まずは一つ目の「主人公の性別によりBGMが変わる」をモデリングしてみる。

とりあえず、素直にモデリングしてみたのが以下の図になる。

「主人公の性別によりBGMが変わる」という決定は「性別ごとに主人公が存在する」という決定が存在しなければ行えないため、この要素に関係付けた。また、「主人公の性別によりBGMが変わる」という決定は、「BGMが存在する」という決定を前提とする。


ここで考察できることは、「主人公の性別によりBGMが変わる」という決定は、「性別ごとに主人公が存在する」という決定に対して、オプショナル(任意的)なものであるということである。つまり、この決定はあってもなくてもかまわないような決定である。

一方で、オプショナルでないような決定、つまり、必須となるような決定が存在する。たとえば「キャラクターのレベルが上がる」という決定を行ったなら「レベルの最大値は99である」あるいは「レベルは無限に上がる」というような決定を行わなければならない。これら「レベルの最大値は99である」あるいは「レベルは無限に上がる」は、「キャラクターのレベルが上がる」という決定に対して必須な決定である。

ただし、ある決定が「オプショナル」なのか「必須」なのかの区別の仕方を一般的に定義するのは難しいかもしれない。


このエントリでは、ゲームデザインにおける決定を、次の二つに分類できることを示した。

  • オプショナルな決定
  • 必須な決定

別の言い方をするなら、ゲームデザインというのはこれら二つ種類の決定で構成されるともいえる。

次回はこの続きを行う予定である。