ゲームデザインの構造から感じられる質

このエントリでは、ドラクエ9のレビューで見つけた、以下の記述をもとに一つ考察してみたい。

装備がグラに反映されるのは良いですね、装備の種類も豊富なので着せ替えが楽しいです。

考察にあたっては、僕が提案しているゲームデザインのモデリング方法を使いたい。このモデリング方法では、ゲームデザインという成果物は、デザイナーが決めた様々なことから成るものだという視点からモデルを作る。

たとえば、上記の記述に関連する部分的なゲームデザインは次のように表現できる。

まず「装備がある」という決定があり、その決定をもとにさらに様々な決定が行われていると考えられる。たとえば「着せ替えができる」というのは、「装備がある」という決定を前提とするだろう。「装備がある」という決定が行われれば、次は「装備できる箇所は8つある」のような詳細な決定が行われる。同様に、「武器」や「盾」、そして、「武器装備はn種類ある」というような決定が行われる。

このように、ゲームデザインは様々な決定結果から成るものだとみなし、さらに、決定間を関係付けたものをこのエントリではゲームデザインの構造と呼ぶことにしよう。


それでは、このモデル(図)をもとに、最初に紹介したレビュー記述に戻って考えてみよう。

装備がグラに反映されるのは良いですね、装備の種類も豊富なので着せ替えが楽しいです。

前半部分は「着せ替えができる」という決定に対する良い評価だと見なせる。後半は興味深い。なぜなら、ゲームの楽しさという観点から、「着せ替え」と「装備の種類が豊富」ということが関係付けられているからだ。このエントリは、この関係につい考えていきたい。なお、ここで装備の種類とは、装備できる全てのアイテムの総数だと解釈する(ただし、レビュー者の意図はもしかすると、装備できる個所の多さかもしれない)。

この関係付けを説明する仮説として、ある決定は他の決定の価値に影響を与える関係にあるとしたい。上記の例でいえば、どれだけの種類の装備があるのかが、着せ替えシステムの価値に影響していると見なしたい。たとえば、装備の種類が現状より少なくなればどうか。あるいは、多くなればどうか。少なくなれば、たとえば、他のプレイヤーとコーディネートが同じになる可能性が多くなることを意味する。他のプレイヤーとのコーディネートの見せ合いをする場合には、装備の種類は出来る限り多い方が楽しいと思われる。


上記の図では、残念ながらこのような関係を表現できていない。図を拡張することで表現してみよう。

この図では、たとえば「武器装備はn種類ある」という決定が、「着せ替えができる」という決定の価値に影響を与えるとしている。

次に、この関係では、どれだけ価値に影響を与えるのかの度合いが重要になる、と考えられる。価値を下げるような影響を与えるかもしれないし価値を上げるような影響を与えるかもしれない。ただし、実際の度合いや度合いの変化の程度は分からない。10種類の装備より、100種類の装備のがあるほうが価値を高める、という感じがする。だけど、100種類より1000種類、あるいは、10000種類あるほうがどれだけ価値を高めるのかは分からない。

下記のグラフは、「武器装備の種類数」の変化が着せ替えの価値にどう影響するのかをに仮に示している。グラフでは200までは価値の上昇がみられるが、それ以後は大きく価値に影響を与えないとして表している。


さて、モデルでは、線の太さによって度合いを表すとしよう。下記の二つの図では「武器装備は10種類ある」場合と「武器装備は100種類ある」場合をそれぞれ表している。

「武器装備は10種類ある」場合には、細い線で、「武器装備は100種類ある」ではそれよりも太い線で影響の度合いを表現している。

このエントリでは、これら図による表現も、ゲームデザインの構造の一つの表し方だとしたい。


まとめとしては、このエントリでは、「着せ替え」と「装備の種類の数」の関係を例にし、ゲームデザインの構造の一つのモデルを示した。ゲームデザインというものをこのように要素と要素間の特定の関係からなる構造として見るならば、ユーザにとってのゲームの価値あるいは質は、そのゲームのデザインの構造の構成が決める、と言えるかもしれない。