ゲームシステムデザインのモデリング:「真・女神転生 STRANGE JOURNEY」の新要素
ちょっと思いついた企画として、ゲームシステムのデザインのモデリングをやってみようと思う。どんな感じにやるってみるかっていうと、とりあえずは、ファミ通とかに載ってる記事から、あるゲームタイトルの新機能的なものに焦点を絞って、それを図式表現してみようと思う。ここでは、図式表現=モデルと考えてもらっても構わない。
ゲームを語るブログをちょっと読んだりしてるけど、そこではモデル的な表現で議論しているのは皆無に思える。一つ、みんなで共通に解釈できるようなモデルリングの視点を考えていきたいと思う。
まず最初は、今週のファミ通から、『真・女神転生 STRANGE JOURNEY』の新要素であるパスワードで悪魔を交換可能なシステムというのをモデリングしてみたい。
真・女神転生 STRANGE JOURNEY(ストレンジ・ジャーニー)
- 出版社/メーカー: アトラス
- 発売日: 2009/10/08
- メディア: Video Game
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真・女神転生シリーズ(以下メガテン)を知らない人向けに少し解説しておくと、アトラスが出してるRPGシリーズの一つ。今作はDSでの作品となる。特徴的なものとしては、敵(悪魔)を会話などを通して仲魔(仲間)にできるという点。今作ではシリーズ初の試みとして、仲魔をパスワードを使って他のプレイヤーと交換できる新システムが追加された。
さて、モデリングとしては、システムの要素をとなるものを関係付けていきたいと思う。どんな要素がとりあえずあるのがというと
- 敵を仲魔にできる
というのがまずある。下記の図はこの要素を表している。どういう意味の図かというと「敵を仲魔にできる」というのは、デザイナーが決めたこと(デシジョン)であると見なしている。とりあえずは、単に仕様である、と解釈してもらってもかまわない。
次に今作の新システムを
- 仲魔を交換できる
という要素としてこの図に追加してみよう。
「敵を仲魔にできる」と「仲魔を交換できる」という要素の関係は、後者には前者が必要である、という意味だと思ってほしい。つまり、「仲魔を交換できる」という決定を行うには、「敵を仲魔にできる」という決定自体がまず行われていなければならないという意味である。もう少し言うなら、たとえば、「敵を仲魔にできる」という仕様が変わってしまいそのような機能がなくなったとしよう。そうすると「仲魔を交換できる」という仕様は意味をもたなくなる。そういった意味で、上記の図は「仲魔を交換できる」は「敵を仲魔にできる」に依存した仕様であることを示している。
ここまで読んだ方の中には、「仲魔を交換できる」ではなくて「仲魔をパスワードを使って交換できる」というのが正確な表現じゃないか?と思ったかもしれない。「パスワード」という要素は次の図で追加する。つまり、モデリングの方針としては、出来る限り細かな要素として表すということである。
図に追加する前に「仲魔をパスワードを使って」というのをもう少し詳しく説明すると、どういうことかというと、どうやら仲魔にした悪魔それぞれにパスワードが用意されるらしい(たぶん、現在のその仲魔のステータスなどのパラメータによってパスワードは変化すると考えられる。同じパラメータであれば同じパスワードになるのかどうかは不明)。で、交換と言うのは、このパスワードを入力することで可能になるらしい。ここでは仕様の詳細は分からないので、とりあえずは、
- 仲魔ごとにパスワードがある
- パスワード入力で召喚できる
という二つの要素として図に追加してみよう。これら二つの要素は「仲魔を交換できる」という仕様に依存する。
次に、ファミ通によれば、パスワードが分かればどんな悪魔でも自由に呼び出せるというわけではないならしい。少なくとも二つの制約があるらしい。
- 主人公のレベル以下の悪魔しか呼び出せない
- 召喚にはマッカが必要(ゲーム内の通貨)
ではこの二つを新たに図に追加してみよう。
この二つをどこに追加するのかは少し悩ましいところであった。候補としては
- 仲魔を交換できる
- パスワード入力で召喚できる
の二つがあった。少し検討してみよう。前者にしてもよさそうな理由は、これら二つの召喚の制約は、どのように召喚されるかという方法に依存しない制約とも考えられるためである。つまり、「パスワード入力で召喚できる」ではなくたとえば「Wi-Fiを使って召喚できる」というやり方も考えられる(たぶん)。その場合でも、これら二つの召喚の制約は存在したままになる。
一方で後者にしてもよさそうなのは、やはり召喚方法が決まった後で、召喚の制約が決まるという見方もできそうだからである。
ここまで書いてみて、そもそもモデリングを誤ったのかもしれないと思った。考え直したのが以下の図になる。
そもそも「仲魔を交換できる」というのは、少し意味的な程度が大きな表現だったのかもしれない(うまく言い表せないけど)。代わりに「他のプレイヤーの仲魔を召喚できる」という表現に変更してみた。これで、「主人公のレベル以下の悪魔しか呼び出せない」「召喚にはマッカが必要(ゲーム内の通貨)」を「他のプレイヤーの仲魔を召喚できる」に依存させることに違和感がなくなる。
また、「仲魔ごとにパスワードがある」というのは「パスワード入力で召喚できる」という要素に依存する気がしたのでそうすることにした。
最後に、もう少し図を拡張することにしよう。どういう拡張をするかというと、従来の既存のシステム要素にどう関係するかという点からである。
たとえば、「召喚にはマッカが必要」というのは「マッカある」という要素の存在を前提としている。同じように、「主人公のレベル以下の悪魔しか呼び出せない」というのは、「主人公にレベルがあること」「悪魔にレベルがあること」を前提としてる。さらには、「悪魔にレベルがあること」というのは「悪魔が存在すること」と「レベルがある」にさらに分解できる。このようにして既存の要素と新規要素を関係付けたのが上記の図である。
とりあえずは以上でゲームシステムデザインのモデリングの第一回目を終わりとしたい。どうだろう? このように図で描いてみることで新たに見えてくることもあるんではないだろうか?