ゲーム製品ファミリについて考えてみる その2:一般的な話と課題について

前回のエントリでは、「ニーアゲシュタルト」と「ニーアレプリカント」の製品化を例に、ゲーム製品ファミリというコンセプトを考えた。前回は少し具体的な例の話だったけれど、このエントリでは、少し一般化した話として考えたい。また、課題についても少し考えてみたい。


ここでは、ゲーム製品ファミリとは、そのファミリ内で、共通となるゲーム要素と異なるゲーム要素を備えるゲームの集合であるとする。あるファミリに属するゲームをそのファミリのメンバーと呼ぶことにする。

上記の図は、二つのメンバーからなるゲーム製品ファミリを示している。この製品ファミリは、3つのゲーム要素の特定の組み合わせからなるゲームで構成される。

  • メンバー1:「ゲーム要素A」と「ゲーム要素B」を備える。
  • メンバー2:「ゲーム要素A」と「ゲーム要素C」を備える。

ゲーム要素Aは、メンバー間で共通となるような要素である。一方で、ゲーム要素BやCは、各メンバーの固有な部分を表す要素である。

ニーアゲシュタルトニーアレプリカントの場合は、主人公キャラクターというゲーム要素が異なる要素である(らしい)。


ゲーム製品ファミリ開発の主な動機は、ユーザの多様な嗜好に対応することにある。「萌え要素があれば(なければ)購入したのに」、「こんなやりこみ要素はいらないからその分安くしてくれたら購入したのに」、「クリア後も遊びたいから、ちょっと高くても隠しダンジョンがいっぱいあるこっちを買う」など。

ニーアゲシュタルトニーアレプリカントの場合は、主人公が異なるのは、海外市場での受け入れられるかを考慮してとのこと。


ゲーム製品ファミリの開発の大まかなステップは次のようになると考えられる。

  • (1) ユーザの嗜好の多様性の分析
  • (2) 分析にもとづく、ゲームの共通部分と異なる部分の定義
  • (3) 定義にもとづく、ゲーム製品ファミリの開発・提供

各ステップで様々な課題があると思う。どのステップとは限定できないけれど、たとえば、次のようなものが考えられる。

  • ゲーム要素への分割容易性: もちろん、いうほど簡単ではないと思うけれど、主人公のグラフィックだけが異なる、というのは、要素への分割対象としては容易だと思う。なぜなら、他のゲーム要素との関わりが小さいと思われるし、ゲーム性へは影響は少ないと思われるから。一方で、たとえば、RPGでの「敵とのエンカウント方式」というものを考えてみると、難しさが分かる。「ランダムエンカウント」をゲーム要素として持つメンバーと「シンボルエンカウント」を持つメンバーでは、他のゲーム要素への影響が大きいことが分かる。たとえば、フィールドやダンジョンのゲーム要素、つまり、それらの設計に影響を与える。「ランダムエンカウント」に適したダンジョンは、「シンボルエンカウント」には適していないかもしれない。
  • テストプレイのコスト: 同じく「敵とのエンカウント方式」で考えてみると、エンカウントの仕方はゲームプレイの過程に影響する。テストプレイ時には、単に「シンボルエンカウント」や「ランダムエンカウント」が機能しているかどうかの確認だけでなく、ゲームプレイ全体を通してのゲーム性やバランスといった観点からの調整が必要になる。つまり、メンバーとして他と異なるゲーム要素(エンカウント方式)だけをテストすればいいのではなく、他の要素との関わりを含めた、ゲーム全体としてのプレイテストが必要になる。


次回もまた課題について考えてみたい。

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