ユーザは、ゲームの作られ方でなくゲームの中身を評価する
CEDECの二日目参加してきた! かなりの刺激を受けてきた。とはいえ、CEDECのことは別エントリで。
会場でオライリーの『「ヒットする」のゲームデザイン ―ユーザーモデルによるマーケット主導型デザイン』が売ってたので買って、帰りにちょっと読んでた。
「ヒットする」のゲームデザイン ―ユーザーモデルによるマーケット主導型デザイン
- 作者: Chris Bateman,Richard Boon,松原健二(監訳),岡真由美
- 出版社/メーカー: オライリージャパン
- 発売日: 2009/09/07
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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以下、口調を少し変えて語ってみよう。
僕のようなゲームデザインの基礎的な側面に関心を持つものが最初に読み取ろうとすることは何か? ゲームデザインの定義である。本書ではゲームデザインを次のように定義している。
ゲームデザインとはゲームのデザインの進化をコーディネートするプロセスである。
ゲームデザインの要素は、プロデューサー、プログラマー、アーティスト、そして、ゲームデザイナー自身を含む、さまざまな参加者からもたらされる。ゲームデザイナーの仕事とは、ある時は欠落している要素を作ることであり、またある時は互いに競合する要素を結合することであり、そしてある時は目的とするゲーム体験を作り上げるべく、すべての要素の結合を確実なものにすることである。デザイナーの仕事は、ゲーム開発のプロセス全体を通じて存在し、マスターファイルの検証まで延々と続く。
さて、僕は何を考えたか? 定義の適切さ? そうではなく、プロセス(行い方)という観点からゲームデザインに着目している点である。デザインという言葉には、もともと、名詞と動詞の両方がある。上記の定義でも「ゲームのデザインの進化」とあるので、この中でいう「ゲームのデザイン」は名詞かと思われる。しかし、この「ゲームのデザイン」の定義は行われていない。ただし、次のページでは、次のようには書いている。
「デザイン」について話すとき、実際に言及しているのはデザインのドキュメンテーションである。
本書では、名詞としてのデザインを、ドキュメンテーションとして捉えているのかもしれない。デザインという活動(プロセス)の最終的なアウトプットはこのようなドキュメンテーションである、という定義は、間違っていないともいえる。しかし、ドキュメンテーションであるとの見方は、ドキュメンテーションの中身については何も語っていない。そこに書かれているものは何か?
以下では少し、ゲームデザインはデザインの一種である、ということを考えたい。ゲームデザインについて考える人は、より一般的なデザイン、つまり、建築や工業製品といった様々な人工物のデザイン、という観点から学べることが多くある。ちなみに、僕自身は「ソフトウェアデザインとは何か?」という研究上の問いから、「デザインとは何か?」をここ数年間学んできた。といっても、このエントリではどんなことを学べるのかは具体的には述べない。
さて、上記の定義がゲームデザインのプロセスの側面に着目しているのは、ある意味では仕方のないことかもしれない。というのも、ゲームデザインだけでなく、より一般的な、デザインの研究、つまり、建築や工業製品といった様々な人工物を対象とするデザイン研究でも、プロセスという側面が強調されてきた。しかし、デザインのことをマジメに考えるには、他の側面があることを知り、その側面について考える必要がある。このことは、ゲームデザインでも同様であると思われる。
Kees Dorstは、"Design research: a revolution-waiting-to-happen" という2008年の論文で、デザインと言う複雑な活動を記述し理解するには、次の4つの要素(側面)が必要だろう述べてる(以下は、そのままの翻訳でなく僕の解釈を含む)。
- オブジェクト(内容、中身):デザイン上の問題と解法
- アクター(実施者):デザイナー、デザインチーム、デザイン組織
- コンテキスト(文脈):デザインという活動が行われる状況
- プロセス(行為):活動自体
このように、基礎的な観点からゲームデザインという活動を考える上でも、プロセスだけでなく、他の要素についても考えていく必要がある。
口調を戻して・・・。
最後に、僕個人の意見を少し言うなら、ゲームデザインのプロセス(行い)についてでなく、もう少し、ゲームデザインの中身、つまり、プロセスの結果としてどんなモノを我々は生み出しているのかを考えていく必要があると思う。その理由は、ユーザが評価するのは、どのようなやり方で生み出されたゲームデザインなのかはなく、その結果としてのゲームデザインであるから。あるいは、ユーザは、どのようにして作られたゲームなのかを評価するのではなく、ゲームの中身を評価するのであるのだから。
なお、ゲームデザインに関する僕の定義は「ゲームデザインの理論」を参照してください。