ソフトウェアとしてのゲームの進化と保守 その2:ゲームユーザの視点

前回のエントリでは、ソフトウェアとしてのゲームの進化と保守が今後の課題になるかもしれないことを述べた。

課題が生じる条件あるいは前提には、以下の3つがあると考えた(前回から少し修正している)。

  • (前提1) ゲームユーザの視点:ゲームユーザは、購入したゲームに対して、その後の更新を要求/期待する
  • (前提2) ゲーム開発者の視点:ゲーム開発者は、ユーザの更新要求/期待に対応する動機がある
  • (前提3) ゲーム市場の視点:一度発売したゲームを継続的に更新していくことが今後の傾向になる

下記の図は、これら前提の関係を示している。

ここで、いわゆるシリーズもの(たとえば、ドラクエシリーズ)の話ではないことに注意して欲しい。つまり、この図でいえば、以下のような話ではない。

今後、シリーズものや移植との関係についても考えていくが、現状では対象外としている。


このエントリでは、一つ目の前提について考えたい。下記の図は、この前提を示している。

あるユーザはあるゲームをプレイする。プレイの結果として、様々な期待する更新要素を持つ。ユーザは、そのゲームが、自身の期待するような要素により更新されることを期待する。
なお、ここではまだ、ゲーム自体がユーザの期待に応じて実際に更新されていないことに注意して欲しい。ユーザは更新を望むだけである。


下記の図は、具体例を示している。

この例では、ゲームAをプレイする二人のユーザがいるとしている。各ユーザは、それぞれ異なる期待を持つ。したがって、各ユーザが期待する更新後のゲームもそれぞれ異なる。もちろん、実際には、ユーザ間で共通の期待が存在することもある。

ユーザが更新を望まないかもしれない理由には以下が考えられる。

  • (1) 嗜好の衝突: 各ユーザが期待する要素間、あるいは、期待要素と既存要素の間で好みの衝突が発生する場合がある。たとえば、あるスキルをあるユーザは「もっと強く」と望み、あるユーザは「もっと弱く」と望むかもしれない。さらには、そのスキルを「更新しないこと」を期待するユーザがいるかもしれない。
  • (2) プレイ体験共有の妨げ: ゲームを楽しくさせる要因の一つには、各ユーザが同じゲームをプレイし、そのゲームについての体験を互いに語ったり、情報交換・共有することにあるかもしれない。ゲームの更新は、「更新前のゲーム」と「更新後のゲーム」を生み出すことになる。このことは、「同じゲームを楽しむ」という行為の妨げとなるかもしれない。

ユーザが更新をどれだけ受け入れるかは、ゲームの形態や更新の種類に依存するかもしれない。

  • (a) ゲームの形態: たとえば、MMORPGなどでは、「(1) 嗜好の衝突」が起こるとしても、ユーザは更新を受け入れるかもしれない。
  • (b) 更新の種類: たとえば、「バグ修正」による更新は、ゲームの形態やジャンルに関わらず「(1) 嗜好の衝突」が発生しにくく、「(2) プレイ体験共有の妨げ」になることも少ないと思われる。他には、たとえば、「クリア後のダンジョンの追加」では、同様に、「(1) 嗜好の衝突」が発生しにくく、「(2) プレイ体験共有の妨げ」になることも少ないかもしれない。


次回は、ゲーム開発者の視点から考えてみたい。

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