面白くないゲームってなんだろう

では,面白いゲームとは何か。
ぶっちゃけちゃうと,「勝ってるゲーム」が「面白いゲーム」です。
やめてー。石投げるなー。
まぁより正確に言うと,「勝てそうな気がするゲーム」が面白い。

【島国大和】面白いゲームとは何だー!を真面目に考えてみる

を読んでいてやんわりとなんとなく思ったこと。まず、大前提としてゲームを作るという行為は、建物を作ることなどと同じようにデザインであるとしたいと思います。とすると、デザインに関する一般的な考察がゲームを作るうえでもあてはまると考えられます。

ここでは、建築家のクリストファー・アレグザンダーの有名な著作『形の合成に関するノート』の一文が関係するように思ったので、少し引用してみます。僕は英語版しか持っていないけれど、中谷礼仁 氏の著作『セヴェラルネス 事物連鎖と人間』でちょうど訳されてるので引用させて頂きます(強調は僕による)。

定規の金属を当てて水平を得る方法に戻り、良い適合と悪い適合が我々の目の前に現れてくる様子を考えてみると、おかしなことに気づく。不思議なことに、この方法は良い適合を確認する直接的で実用的な方法を示してはいない。我々は高い部分が残すインクの跡をみると、悪い適合があることを知る。実際は、良い適合が分かるのはその反対の見方によってのみ、高い部分が無くなったときに限ってなのである

実際における良い適合の概念は、そのような欠点が無いことだけを表しているのであって、具体的な説明は示されることなく、間接的に説明されるだけである。

我々は最も強く表れていて、最も明らかに注意を引く、悪化も最も起こりやすそうな、形とコンテクストの関係をとる。我々はこれ以上できない。(・・・中略・・・)現実のデザインの問題では、達成されるべき適合があるという我々の確信は奇妙に希薄で空虚なものである。我々は二つの触れえぬものの間のある種の調和を探している。それは、まだ我々がデザインしていない形と、的確に表しえないコンテクストの間の調和である。

これらアレグザンダーの記述を引用したうえで、中谷氏はこのように書いている(強調は僕による)。

しかし、ここで述べられている内容はまったく逆である。そのような差異は不適合の表象であり、また私たちは完全な調和を認識することができず、不調和を通してのみしかその存在を知ることができないというのであるから。良いデザイン(適合)とはひとつ創造されるのではなく、問題を取り除いていくこと、直接感知できない「問題のないもの」全体なのであって、それは「すべての可能な不適合の選言」なのである。この定義の射程は巨大である。というのも、我々が常日ごろ行うデザイン行為が実はたまたま目についたかのような不適合を直そうとしていくだけものであり、実はその背景にその行為を意味付ける不可視の全体が潜在しているだけというわけだから。

セヴェラルネス 事物連鎖と人間

セヴェラルネス 事物連鎖と人間

形の合成に関するノート

形の合成に関するノート

ここで僕が思うのは、「面白いゲームとは何か?」という質問と「面白くないゲームとは何か?」という質問の二つがあるということです。一つ試して頂きたいのは、身近にある適当なモノを考えてみて、「このモノの良い点は何か?」という質問に答えるのが、「このモノの悪い点は何か?」という質問に答えるより恐らく難しいという点です。さらには、モノというのは、徐々に改善されていきます。あるモノが以前のモノと比べて良くなった点を自分で指摘できるかどうか試してみてみるときっと難しいかと思います。もちろん、そのモノに対する知識がないと指摘自体は難しいと思います。

ゲームに関しても、最初は「何か面白くないぞ」ということに気づき、その面白くない点を特定し、そしてそれを取り除いていくようなことを行うかと思います。もちろん「面白いとはどういうことか」というのが事前に分かっていれば、このような修正のプロセスを省くことができるだろうということはあります。


つぎに、そもそも「面白い/面白くない」という質問が現実的に有効かどうかも気になります。

 今言ってきたことをざっくりまとめると,

【ゲームとは,ルールに従った上での能力判定装置。現実社会とは別軸】
【勝ち負けが能力に依存するゲームで,勝てそうなのが面白い】

従って,

【誰が遊んでも面白いゲームというのはなかなか作れない】

【島国大和】面白いゲームとは何だー!を真面目に考えてみる

ここで、もう一つの質問のもちかたとして「ユーザは何を満足/不満に思うか」の方が効果的かもしれません。特に不満に関してです。というのも、ユーザが不満を持つ時、その個々の不満は面白いかどうかとは少しかけ離れているかもしれないためです。たとえば、『ドラクエ9』の不満では次のようなものがあります

  • カジノがない
  • ギラ系の呪文がない
  • ルイーダの酒場でしか並び替えできない
  • メッセージスピードを変更できない

またNDSRPGの『セブンスドラゴン』では、次のような不満があります

  • まとめ買いがない
  • 一括逃走コマンドがない
  • 最初からダッシュできない(序盤のクエストをクリアすることでダッシュできるようになります)

これらの不満は、面白いかどうか、勝てそうかどうかに直接関係のある不満でしょうか?


このエントリでやんわりと言いたかったことは二つです。

  • 「面白くないゲームってなんだろう」という質問のもちかたもある
  • 面白い/面白くないという観点もあるが、ユーザの満足/不満のという観点もある

この二つの組み合わせると、ユーザの不満をなくすことが面白いゲームにつながる、ということになります。この見方は見方の一つではありますが、この見方が有効だと思われるのは、ユーザの不満に着目するなら、それは比較的具体的であり、学ぶことができ、失敗を未然に防ぐことにつながると考えられるためです。